当NPO法人では、2016年より子どもを対象とする科学講演会を開催してきましたが、今回、初めて大人(中学生以上)向けの講演会を企画、開催いたしました。ちょうど大分県立美術館(OPAM)で「海と宙の未来」展(JAXA、JAMSTEC 日本初のコラボ実現!)が開催中ということもあり、JAMSTECの研究者の方にご講演いただきました。

演題  日本列島周辺の深海の火山 ~大陸形成の謎に迫る~

講師  田村 芳彦氏 JAMSTEC(海洋研究開発機構)上席研究員

ご講演中の田村芳彦氏

開演直後の会場内 この後も来場者があり120名近くの方が聴講されました

会場にはハイパードルフィンなどで採取された岩石が展示され、講演の前後に、来場者の方々は興味深そうに観察されていました。世界で初めて発見されたという、初生マグマを持った岩石の展示もありましたが、その採取時の様子や火山形成のメカニズム、初生マグマ発見の意義など、下の動画でとてもわかりやすく解説されていますので、ぜひご覧ください。

初生マグマや結晶分化について、また、会場からのご質問にもあった沈み込む海洋プレートから供給される水について、より詳しく知りたい方は、こちら(JAMSTECのサイト)をご覧ください。(初生マグマをオレンジにたとえた説明はわかりやすいです。)

今回の講演会では、ビデオ上映(西之島の爆発の様子、探査機ハイパードルフィンから見た映像など)が長く、もっと専門的なお話を伺いたかったという本格的な方もいらっしゃいました。そのような方のために、少々難しい内容もありますが、講演内容に関連したJAMSTECの記事を紹介しておきます。これを田村先生に、わかりやすく解説していただけるとよかったのですが・・・会場が17時に閉まるため、その時間をとることができなかったのは残念でした。

*<CDEX Magazine 「地球発見」まだまだ知らない「ちきゅう」がある。> 大陸地殻誕生の謎に挑む

*<2014年6月 JAMSTECニュース> 西之島の不思議―大陸の出現か?

*<2016年9月 プレスリリース> 大陸は海から誕生したとする新説を提唱                                    ―西之島の噴火は大陸生成の再現かー

*<2018年11月 プレスリリース> 西之島の噴火が大陸生成を再現していたことを証明

このように西之島の噴火によって、大陸生成のメカニズムが解き明かされようとしていますが、それだけでなく、生物学においても貴重なデータが得られようとしています。西之島は本土から遠く離れ、他からの生物が入り込みにくいうえ、島のほとんどが溶岩に覆われているため、植物が育ちにくい、という厳しい条件下にあります。ですから、ほぼ失われた生態系が、再び構築される過程を研究することができるのです。今後も西之島に注目!

講演で上映されたビデオの中に、ハイパードルフィンが登場しましたが、写真で見て想像していたよりも、かなり大きいのが意外でした。高さはいくらあるのだろうと調べてみました。2.6mです。さらに、ハイパードルフィンは、ビデオにあったような海底の岩石の採取などを行うだけでなく、地震計を設置して海底ケーブルと接続させる(南海トラフの地震・津波観測監視システムの構築)など、細かい作業も行えることを知りました。その活躍ぶりを動画でご覧ください。(ここをクリック)硬い岩石をバキバキっともぎとるほどのパワフルさと、繊細さとを併せ持っているのですね。(ハイパードルフィン大好きとおっしゃる田村先生のインタビュー記事はこちら-リンズィ-氏の後に登場)
2000年より調査潜航を開始して以来、2017年には潜航回数2000回を超え、JAMSTECの潜水調査船、探査機の中で最多の回数だそうです。当初最大潜航深度は3000mでしたが、現在は4500mと進化し、さらにカメラや投光器、サンプルバスケットなどいろいろな改造も加えられています。科学研究には、科学者だけでなく、このような機器の操縦・運行やメンテナンスを担当する方々の役割も重要であることを改めて認識しました。講演会終了後のアンケートに、「海と陸とでその岩石の種類が異なることを初めて知りました。」という高校生の回答がありました。そうなんです。地球は自分が住んでいる惑星でありながら、知らないことがいっぱいあります。今回の講演で、もっと「地球」を知りたい!と思っていただけたら幸いです。