「宇宙への夢を追って」と題して、江藤製作所 代表取締役社長 神品 誠治氏にご講演いただきました。

H-Ⅱロケット組み立て棟の2枚扉(江藤製作所のサイトより)

江藤製作所は、ここ大分で幅広い分野にプラントや設備機器を提供している企業です。ご講演では宇宙開発分野についてのお話しを伺いました。

江藤製作所では、種子島宇宙センターの建設に携わり、高圧ガス噴射設備の建設などを手掛けられました。このセンターのH-Ⅱロケット組み立て棟の2枚扉も製作され、これは2枚扉としてはギネスに認定された世界最大の大きさだそうです。
また、筑波宇宙センターの「無重力環境試験設備」の高圧ガス呼吸空気供給設備も、江藤製作所オリジナルの設計で製作されました。オンリーワンの設備ですね。

無重力環境試験設備(JAXAのサイトより)

「無重力環境試験設備」は、水の浮力を利用して宇宙空間の無重量環境に似た環境をつくるシステムです。船外活動の模擬試験およびISS搭乗宇宙飛行士の基礎訓練に使用されます。高圧ガス呼吸空気供給設備は、その際に使用する水中用宇宙服や支援ダイバーのスキューバタンクに、呼吸用空気を供給するための設備です。
JAXAのサイトによると、残念なことに、無重量環境試験設備は、2011年3月11日の東日本大震災により、水槽配管が破損し、水槽内のほとんどの水が抜け、水槽周りの機器の転倒、水槽底部の変形等の甚大な被害を受けたそうです。水槽の復旧は困難であり、また所期の目的を十分に達成したということで、水槽は昨年、解体・撤去されたようです。
「無重力環境試験設備」は、1994年に完成し、試運転を経て1996年から稼働していました。15年間にわたり空気供給設備も活躍しました。お疲れ様でした・・・

江藤製作所の最近話題になった仕事は、昨年打ち上げられた環境観測小型衛星「てんこう」の外部パネルの製作を担当されたことです。外部パネルは宇宙空間での大きな温度差や宇宙線に耐えなければなりません。炭素繊維強化プラスチック(CFRP)を使って開発されましたが、江藤製作所にとっては初めて扱う素材であり、多くのご苦労があったようです。
大分県のWebサイトの紹介記事(https://oita-katete.pref.oita.jp/web_magazine/etoss/)によると、このパネル開発のプロジェクトリーダーを任されたのは、なんと入社1年目の若者だったそうです。

講演会当日は、 他にも子どものための大きな科学イベントがあったため、来場者は少なめでしたが、来場者へのアンケートの回答には、「大分に自信が持てます。」「大分が宇宙開発に関わっていたことを初めて知った。」などの感想があり、大分にもモノづくりのスバラシイ企業があることをご紹介できたのではと思います。

大分発のパネルに包まれた人工衛星が、今日も地球を回っています。