「大分川ダムを知ろう!学ぼう!」と題して、
国土交通省 九州地方整備局 大分川ダム工事事務所 調査設計課 課長の杉田 聡氏にご講演いただきました。(8月4日土曜日 大分県立図書館 視聴覚ホールにて)

夏休み期間中であったためか大人、子ども合わせて約140名と、多くの方々が聴講されました。

講師の杉田 聡氏

会場の皆さん

大分川ダムは洪水調節と水道用水確保、河川環境の保全のために建設が進められています。
大分川は堤防が壊れると、家屋より河川の水位のほうが高くなり、大きな被害が出る地域が多くあります。大分川ダムの洪水調節方式は、九州の国管理のダムで初めて「自然調節方式」を採用しているそうです。これは雨が降ってダム貯水池の水位が「常用洪水吐(じょうようこうずいばき)」といわれる穴の位置(標高176.4m)まで達すると、そこから水が自然に流れ出ていくようになっている方式です。このような構造のため、人間の判断で放流量の調節はできません。

  左図とこの写真は 大分川ダム工事事務所の Webサイトより

100年に一度の大雨が降った場合のピーク時流入量として、毎秒610㎥を想定し、そのうち、毎秒430㎥をダムに溜め、残りを洪水吐から川へ流すことになるそうです。もし、このピーク時の雨が降り続いた場合に、何時間分を安全に溜められるのかを計算してみました。大分川ダムの洪水調節容量が14,300千㎥ですから、約9時間分は溜められる計算になります。常時満水位まで水が溜まっていない状態からであれば、もっと溜められることになります。

近年の想定以上の大雨を考えると、ダムが完成しても、やはり大雨注意報や大雨洪水警報などに日頃から注意を払う必要があります。

現在、大分川ダムは試験湛水中です。7月3日に常時満水位に到達、さらに秋以降洪水時最高水位(サーチャージ水位)まで水を溜め、その後、最低水位まで水位を下げる計画です。これは水漏れがないかを調べるだけでなく、それまで水がなかったところに、水が入ることにより、地盤が緩んで地滑りが起きたりしないかを確認するためだそうです。念には念を入れて、調べてもらうと安心ですね。

1970年に予備調査を開始してから48年が経ちました。半世紀近くかかったダム建設は、地域の方々のご協力と、建設に関わった多くの方々のご尽力により、ようやく完成を迎えようとしています。
地元の要望で“大分川ダム”は“ななせダム”に名称が変わるそうです。“ななせダム”・・・素敵な響きですね。

来場者から「ダムの末路はどうなるのか?」という質問がでましたが、ある本によると、日本では、これまでの地震でダム本体が崩れた例はなく、建造から100年近くたっていた神戸にあるダムも、阪神淡路大震災の際、ダム本体の安全性に問題はなかったそうです。このように半永久的ともいえるダムに、末路が訪れるとしたら、それは、よほどの天変地異や戦争といったものが起きた時かもしれません。この美しい“ななせダム”が100年、200年、300年・・・とずっと活躍できる世界でありますように…

大分川ダムの治水について詳しく知りたい方、利水や環境保全についても知りたい方は、大分川ダム工事事務所のWebサイトをご覧ください。
http://www.qsr.mlit.go.jp/oitagawa/

講演会終了後、65人の方からアンケートに回答していただきました。今後の科学講演会のテーマ選定や、広報の方法、会場運営などに生かしていきたいと思います。ありがとうございました。
次回の科学講演会は11月17日(土)に開催予定です。(詳細は後日お知らせします。)