*京都大学名誉教授 宇宙物理学者
*同志社大学特別客員教授

*一般財団法人花山宇宙文化財団 理事長

会場:大分県立図書館 2階視聴覚ホール

「太陽の脅威」という、ちょっとドキッとするような演題のためか、多くの方々(約120名)が聴講に来られました。

時間の都合で子ども達だけからの質問を受けました。

質問したい数人の方達が、講演会終了後も残って直接先生に伺っていました。

ご講演は、花山(カザン)天文台 のお話から始まりました。花山天文台は京都大学大学院理学研究科の附属天文台です。この天文台が予算削減のため閉鎖の危機に見舞われたため、一般財団法人 花山宇宙文化財団 を設立し、法人賛助会員を募って財政支援をされているとのことです。(本会の1月の講演で紹介された富士山測候所と同様に、科学の研究や啓発に必要な施設への国家支援が低下しており、研究者自らが施設の存続のために頑張っておられます)

京大花山天文台

京都に行く機会があれば、花山天文台も訪れてはいかがでしょうか。この天文台は建築学的に稀少で文化財的価値もあるそうです。アクセスマップはこちら(文化財的価値についての所見は花山天文台のサイトで読めます)

柴田先生の花山天文台に対する熱い想いから、なかなか本題の太陽の話題に移らず、「これは聴きたかった話じゃない」と、しびれを切らして途中で帰ってしまった親子がいました。あ~、残念!その後の「太陽の脅威」は興味深いお話が満載でしたのに

太陽フレアとは

毎年、当会の共催で「青少年のための科学の祭典 大分大会」を開催しており、大分天文協会のご協力により太陽の黒点を天体望遠鏡で観察できる機会が(毎年ではありませんが)あります。この黒点は巨大な磁石の磁束管の切り口なのだそうです。この黒点の磁場が変化する時に起きると考えられている大爆発が太陽フレアです。その全エネルギーは、なんと水爆10万~1億個にも相当するそうです。

右の画像は太陽観測衛星「ひので」が捉えた最強磁場を持つ黒点です。(宇宙科学研究所のサイトより)鉄粉をバラまいて棒磁石を置いた時の模様と少し似ていますね。

太陽フレアに伴って、大量の太陽大気(コロナ)のガス(プラズマ)が噴出します。これは「コロナ質量放出(Coronal Mass Ejection:CME)」と呼ばれ、速度:秒速100~1000㎞、質量:10億~100億トンにもなります。(想像を絶しますね)フレアが起きると、大量の放射線や高エネルギーの粒子が放出されます。地球は地磁気や大気によって、放射線などから守られていますが、大規模なフレアが起きると地球にいろいろな被害をもたらします。次の動画は金属板で人工的に日食にして観測したコロナ質量放出の様子です。

(国立研究開発法人 情報通信研究機構の宇宙天気予報 https://swc.nict.go.jp/「ユーザーガイド」→「動画アーカイブ」より   「豆知識№15」では太陽フレアの動画も見られますよ)

太陽フレアの地球への影響

<出典> 総務省 宇宙天気予報の高度化の在り方に関する検討会 報告書(P.9図1)(元出典はNICT:情報通信研究機構)

●1989年3月13日 カナダ、ケベック州の大停電(被害総額は数百億円)

●1994年2月22日 リレハンメル冬季五輪中継のテレビ映像が突然映らなくなった


●2000年7月14日 X線天文衛星「あすか」が故障し、大気圏に突入、落下


●2001年4月2日 航空機との通信が困難に


●2022年2月10日 スペースX社のスターリンク衛星49機のうち40機が運用高度に到達できず、大気圏に再突入させた

<出典>総務省 宇宙天気予報の高度化の在り方に関する検討会 報告書(P.34図10の一部)

*最近はドローンの活用が進んでいますが、ドローンの制御にも影響を強く受ける可能性があるそうです。また、カーナビの位置情報の誤差が大きくなったり、携帯電話がつながりにくくなったりします。

太陽フレアの人体への影響

大規模な太陽フレアに伴って発生する「コロナ質量放出:CME)」が地球に衝突すると、大きな地磁気変動によって磁気嵐が発生します。人間の血液中にある赤血球にはヘモグロビンという鉄を含む成分があるため、この磁気嵐の影響を受けるのではと考えられています。

◆ 京都大学病院の西村勉氏らが、男性の自殺数と磁気嵐の強度との関連性を調べたところ、p=0.04(p値が0.05未満であれば統計的に「有意差あり」と判断される)で、関連性が認められました。脳内ホルモンのバランスが崩れるからではないかと考えられているそうです。

地磁気攪乱の影響で、心筋梗塞や脳卒中の発症が増加するという報告もあります。人体には微小な電流が流れていますので(心電図や脳波の検査で利用)、磁気によってその電流が乱れるからなのでしょうか?

スーパーフレア

太陽フレアの規模はX線強度で5段階に分類されています。最も小さいものがAクラス、以後B、C、M、Xクラスとなっています。スーパーフレアはXクラスの100倍以上の規模です。ケプラー宇宙望遠鏡で、太陽に似た恒星の明るさの変動を観測したところ、スーパーフレアが発生していたことが確認され、その発生頻度も計算されたそうです。このデータから予測された太陽でのスーパーフレア(Xクラスの100倍)の発生頻度は数千年に1回となりました。

太陽の望遠鏡観測が始まってまだ400年ほどしかたっていませんので、人類は太陽のスーパーフレアを観測したことがありません。しかし名古屋大学のグループが、樹齢1900年の屋久杉の年輪に含まれる放射性炭素を測定したところ、774年(奈良時代)から1年間の増量が通常の20倍に達していたことから、スーパーフレアが発生していた可能性があると考えられています。また、1770年9月(江戸時代)に名古屋や京都でオーロラが見えたとの記録があり、これもスーパーフレアが発生した可能性が高いとのことです。これらの時代に電気の使用はなく電子機器などもなかったので、特に大きな被害はなかったのではと考えられています。

宇宙天気予報

太陽は約11年周期で活動が活発になったり弱まったりしていますが、本年(2025年)は太陽活動の極大期に入っています。(7月頃がピークか?)太陽活動にともなって発生する現象を観測して、地球への影響を予測し、起こりうる被害に備えるために「宇宙天気予報」が出されていますので、この予報を参考に、対策できることがあればしておきましょう。以下は講演会でご紹介いただいた宇宙天気予報のサイトです。

総務省 情報通信研究機構(NICT) https://swc.nict.go.jp/

宇宙天気ニュース(詳細な説明や動画あり) http://swnews.jp/

(アマチュア)Solar Ham (英語)https://www.solarham.com/

米国の国立海洋大気庁の宇宙天気予報センター https://www.swpc.noaa.gov/

◆(宇宙天気予報ではありませんが)柴田先生のX(ツイッター) https://x.com/cosmic_jet 
太陽フレアの動画などもありますよ。以下は柴田先生のXより