演題 富士山から見えるサイエンス


現在の私たちは、台風が発生したことや、いつ頃日本に来るのかを、気象衛星からのデータなどにより事前に知ることができます。それを当たり前のように思っていましたが、昔は事前に知ることができなかったため、突然に台風がやって来ることになり、大きな被害をもたらしていました。日本で一番高く一番宇宙に近い富士山に気象を観測する測候所が建設され、1964年には気象レーダーも設置されたことから、台風の接近を事前に知ることができるようになり、台風から多くの人命を救うことになりました。(多くの困難のもとにレーダードームが建設され、その時の様子が、NHKプロジェクトXの第1回目で放送されたそうです)現在は気象衛星の活躍により、富士山測候所はその役目を終えたとして、2004年に無人化され取り壊しも危惧されましたが、2007年、「認定NPO法人富士山測候所を活用する会 」https://npofuji3776.org/ が気象庁より測候所を借用して、ここで様々な科学研究がなされ有効活用されるに至っています。(気象庁での名称は「富士山特別地域気象観測所」ですが、「富士山測候所」の名称が使用されています。)

(富士山測候所を活用する会のWebサイトhttps://npofuji3776.org/research/use.html より)

富士山頂・剣ヶ峰(標高3776m)は自由対流圏(地表や海面の影響を受けずに自由に動く大気層)の高度に位置しているため、日本国内の汚染の影響を受けずに、ユーラシア大陸から飛来するPM2.5(微小粒子状物質)などの汚染大気の長距離輸送の影響を観測することができます。
国立衛生研究所は、アジアが世界的なCO2の排出源であるデータを示すなど、優れた成果を出しています。
通年観測のために100個のバッテリーを使用し、夏季の2ヶ月で充電するそうです。

マイクロプラスチックといえば、海中での存在が問題視されていましたが、大気中にも存在することが早稲田大学創造理工学部の大河内博教授らの富士山頂での観測からわかってきました。これについては、ニューヨークタイムズなどの海外メディアでも報道されたそうです。詳細は2023年の成果報告の資料第15回成果報告会予稿集(かなり恐ろしい結果が。安心して空気も吸っていられない?)、富士山環境研究センターのサイト(メディアでの記事の紹介)でご覧ください。

富士山は、その山頂が夏季雷雲の雲底に届くことや、孤立峰なので雷雲の形状に影響を与えにくい、など雷の研究をするには理想的な場所です。雷雲通過時の放射線挙動と電場構造などを調べています。
本日の講師、鴨川仁先生のご専門です。

≪火山ガスのモニタリング≫
*山頂で硫化水素、二酸化硫黄       
*太郎坊で硫化水素、二酸化硫黄を計測
*登山道を徒歩で 硫化水素、二酸化硫黄、オゾン、一酸化炭素を計測
≪地磁気の観測≫  マグマの動きは地磁気を変化させる

これらのデータを無人の冬季でもモニタリングするために、SONY が開発した低消費電力長距離通信(LPWA)であるELTRES を使用することにより、通年での観測が可能となりました。ELTRES は商用電源が使えなくても、バッテリーで100Km以上の長距離を伝送できるそうです。
これらのデータはこちらのサイトで閲覧できます。(火山性ガスと全磁力)

富士山では毎年、遭難者や死亡者が出ています。
登山者にビーコン(近距離無線通信技術を用いて位置や情報を取得する技術を搭載したデバイス)を配布して「登山者の現在位置」を可視化し、有事には適切な避難誘導や捜索等に活用し、平時には登山者の集中緩和や世界文化遺産の保全管理等に活用することによって、富士登山者の安全と環境保全に役立てるために設立された法人です。詳しくはこちらで。
富士登山の初心者の方は、安全に登山するために「富士登山オフィシャルサイト」を確認しておきましょう。

広範囲の研究者のコラボレーションによる富士山での観測・研究は環境保全や災害対策に貢献しています。また登山者や地域住民に役立つ科学データ情報を、リアルタイムに提供しています。しかしながら、その運用経費は公的補助がなく、寄付や助成金、クラウドファンディングなどによっています。そこで、YouTubeチャンネルを開設し、広告収入を得ることにしたそうです。
これをお読みになった皆さん、ぜひ「富士山頂ライブカメラ」にチャンネル登録していただき、動画再生をお願いします。いろいろな動画がありますが、以下はその1例です。

2024年8月13日のペルセウス座流星群 3時27分頃の火球

本講演会は、大分市の「あなたが支える市民活動応援事業(1%応援事業)」によって開催しました。応援してくださった皆様、誠にありがとうございました。